混乱を極めた斎藤元彦前知事の失職に伴う兵庫県知事選が本日実施、即日開票され、斎藤元彦前知事が圧勝した。この背景にはSNSを中心にしたネット選挙活動による、情報開示と市民の理解賛同がありました。ネット対テレビとも言われたこの選挙戦をマーケティング視点で考察しました。
ネット対テレビの構図の結果
今回の知事選がネット対テレビと言われた背景には、ネットとテレビの事実と主張が全く異なるでした。その内容についてはここで述べることはしませんが、ネットの主張がなぜ効率よく市民の間に広げられたのか? そこにはインターネット、とりわけ情報Push型のメディアへと変質したSNS(プラットフォーム)および動画(クリエイティブ)の影響が大きいでしょう。
ソーシャルメディアは人間同士を効率よくつなぐようにできています。さらに人と人との情報のやりとりがさかんになるように設計されています。ここで言うソーシャルメディアとは、YouTube、TikTok、インスタグラム、X、フェイスブックを指します。これらのソーシャルメディアには、それぞれの人に合った、最も興味関心を示すコンテンツが表示されるためのアルゴリズムが駆動しています。ソーシャルメディアにとって、その人が興味を持つコンテンツを視聴させ続けることによって滞在時間が高まり、広告収益が高まるからです。ARPUとは個々の人、視聴者から平均的にどのぐらいの収益を得られれるのかという指標で、このARPUを上げるためにSNS(プラットフォーム)はアルゴリズムを日々チューニングしているのです。
ソーシャルメディアをうまく利用すれば、多くの人々の日々の意思決定、行動、関心の方向などを思い通りに操作することもできるのだ。
「デマの影響力 ハイプマシン」 シナン・アラル著
上記は2022年国内で発刊された、シナン・アラル氏の「デマの影響力〜なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」にはソーシャルメディアを利用すれば、選挙を大きく変えられると主張している。2016年と20年の米国大統領選挙で実際に確認されたSNSによる影響を具体例としてあげながら、なぜデマ情報が選挙を左右するに至ったのかが詳細に記載されている。この本のタイトルは邦題が「デマの影響力〜なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」という、SNSなどインターネットに対してネガティブにとらえられがちなタイトルだが、原題は”The Hype Machine〜How Social Media Disrupts Our Elections,Our Economy, and Our Health and How We Must Adopt”であり、「デマ」がテーマではなく、主軸は「The Hype Machine」この本の中ではSNS,AI,スマートデバイスがもたらす、新しいムーブメントを起こす仕組みそのものがテーマなのです。
今回の兵庫県知事選挙においては、圧倒的に斎藤元知事に関する情報量が他候補を押さえていました。一方で、テレビは選挙戦に突入してから、公平性を保つという点から報道に関しては、知事を辞職に追い込むまでの情報発信頻度とは大きく減少し、ほぼ知事選には触れない、「だんまり」を貫いていたと言えます。斎藤元知事およびそれを支援する側の情報はその量と、SNSプラットフォームのアルゴリズムを意識した情報戦略に成功したと言えます。
マーケティングもプル型プラットフォームへシフトすべき
振り返れば今年の選挙は全てネットを活用した陣営が躍進する結果となりました。都知事選の石丸氏、総裁選の高市氏、衆議院銀選挙の国民民主党とれいわ新選組などの躍進、そして今回の兵庫県知事選挙です。これらはすべて、過去のSNS型から情報プッシュ型のSNSがそれを後押ししたと言えます。特に今回の兵庫県知事選挙では、斎藤氏のまさにどん底からの逆転劇をもたらしました。この手法は先に紹介した”The Hype Machine〜How Social Media Disrupts Our Elections,Our Economy, and Our Health and How We Must Adopt”にも詳細に記述され、欧米グローバル企業は数年前から積極的に実施をしています。
今回の兵庫県知事選挙を単なる選挙運動ととらえず、圧倒的なメディアパワーを認識した上で、日本企業の戦略に積極的に導入すべきでしょう。
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