急成長するTikTokショート動画プラットフォームはB2C企業のマーケティングツールとして確固たる地位を築きつつありますが、B2B企業はいまだに懐疑的です。競合企業が未参入の今こそ、B2B企業には大きなチャンスがあります。
B2B、つまり生活者・消費者向けではなく、B向け事業者向けの商品やサービスに関するマーケティング手法として、TikTokをはじめとしたショート動画プラットフォームを積極活用している企業はまだまだ少ないです。TikTokやInstagramは「若者向けメディア」だという認識や、動画制作はノウハウもないし、コスト高という認識、そして依然としてSNSは炎上リスクが高いという認識、など、否定するには十分な理由があるからでしょう。日本ではさらに、オーガニック投稿(通常の企業アカウント)は広告を直接売るわけではないので、広告代理店が積極的に提案しないという背景もあるようです。
TikTok導入を見送る理由
・TikTokやInstagramは踊ったり、歌ったりの若者メディアだ という誤認
・動画制作はコストが高くノウハウもない
・SNSは炎上リスクが高い
・マーケティング領域は広告代理店に任せており、広告媒体以外の提案がない
上記を踏まえると、B2B企業の担当者がマーケティング施策としてTikTokを社内上申し、承認を得ることは非常に難易度が高いのが現状でしょう。役員にTikTokやInstagramなどの理解を得られるわけがない、動画制作費は高いだろうし、価格の正当性も判断できない、ましてやSNSでユーザーと交流するなどリスクだらけだ、取引広告代理店も消極的だ、が現状と思われます。
一方で、デジタルマーケティング先進国米国では、TikTokをB2B向けに導入する企業が爆発的に増えています。B2CブランドもB2Bブランドも、ショート動画を通じての目標は共通しています。それは「製品やサービス」をわかりやすく伝えること。生活や仕事の課題をコンテンツによって解決策を示し、製品・サービスの認知(Attention)と訴求理解(Appeal)を深めることです。自分たちはB2B事業だから、ホームページの情報や記事投稿やサービスサイトでのナーチャリングで十分だというのは間違いです。TikTokやInstagramのショート動画はそうした情報よりもはるかに理解度を高める表現フォーマット、表現手法なのです
TikTokを導入すべき理由
❶クリエイティブ&バイラル
まず第一に、画像やテキストよりもはるかに高い「表現力」です。YouTubeのようにひたすら長く細かく説明する必要もありません。限られた時間の中で、コンパクトに製品やサービスの理解を深めることができます。この表現力に伴う、ブランドの認知(Attention)と訴求(Appeal)、調査(Ask)への影響力を利用しない手はありません。
さらに質の高いコンテンツはTikTokによって評価され、さらに他の視聴者への視聴機会を拡大します。まさに「バイラルの力」です。TikTokのアルゴリズムは、投稿されたコンテンツが特定数の母集団に視聴され、テスト、評価されます。その過程においてどういったターゲット層にエンゲージメント(視聴されたり、いいねなどのアクション)されるかもデータとして蓄積し、次のターゲットに配信されていきます。コンテンツが魅力的で、挑戦的で、創造的であれば、今までのソーシャル メディア プラットフォームよりも広く拡散される可能性が高くなります。これにより、ブランドはクリエイティブな帯域幅と予算を拡大して試行錯誤するようになります。
❷新しい層へリーチする
TikTokは新しいメディアであり、その層は確かに若者層がメインです。最近のTikTokのユーザーデータを見ると、10代20代だけでなく、今では30代40代の視聴者も増えています。一方で、過去の情報取得のメインであった「Pull型」情報取得の検索行動は減り、リコメンド型ショート動画からの「Push型」で情報取得するユーザーが増えています。 B2Bブランドであっても、20代〜40代へ、自社製品サービスを知ってもらうためには「Push型」での情報発信も欠かせなくなっています。TikTokを利用することで、今まで訴求できていなかった「新しい層」へのリーチが可能になるのです。
❸製品ユーザーも巻き込む
UGCという言葉をお聞きになったことがあるでしょう。User Generated Contentsです。製品ユーザーが自ら制作し、発信するコンテンツです。B2Cブランドにおいてはこのユーザー発信のコンテンツマーケティングを有効活用し、成功した事例は数多くあります。B2Bブランドであっても、そこには製品がありサービスがあり、そしてユーザーが存在します。B2Bブランドが積極的にTikTokアカウントを活用しながら、UGCも巻き込んでいくことで、TikTokのマーケティング効果は飛躍的に拡大します。 TikTokアカウントにもユーザーからのコメントも書き込まれ、それらにブランド側からも積極的に対話することでブランドの調査(製品サービス購入前)や購入後のサポートをTikTokアカウント内のコメントや問題解決コンテンツを展開することで、ユーザーを推奨者(ファン)へと変えるのです。
❹先行優位性
Google検索で特定製品サービスジャンルで、上位表示することの難易度が上がっていきていることや、生活者の検索離れも増えてきています。また検索連動型広告もビッグワード(特定ジャンルを示す一般名詞など)の広告単価も高騰しています。そうした現状において、まだまだ広く認知されていないB2BブランドのTikTok、またはInstagram、YouTubeショートにおけるコンテンツマーケティング施策はチャンスが大きいと言えます。私は再三、このブログで「ショート動画は情報発信の標準フォーマットになる」と書いています。つまりどの企業も、確実にショート動画による情報発信は避けられないのです。そしてその現実を前にして、日本ではまだまだそうしたB2B企業が少ない現状は、非常に「先行優位性が高い」と言えます。自社の製品サービスにおいて、TikTokでどれだけコンテンツがあるのか、競合企業やUGCが存在するのか?事前に調べてどの程度のコンテンツがアップされているか調べてみるのもよいでしょう。
B2Bマーケティング TikTok導入事例
グローバルではすでにB2B企業の積極的なマーケティング活用の事例があります。下記は具体的な企業アカウントの例です。ソフトウェアとしてB向けのソフトウェアや機器を販売しています。どう使えば自社ソフトウェアやサービスを顧客の具体的課題を解決できるかを日々、ショート動画という形(フォーマット)で発信しています。
・Shopify TikTok公式アカウント
・Adobe TikTok公式アカウント
・Sage TikTok公式アカウント
・SquareTikTok公式アカウント
さあ、B2Bマーケティングとして TikTokを始めましょう
上記のように、B2B向けのTikTok活用マーケティングはこれから本格化します。とはいえ、TikTokはあくまで手段であり、TikTokをマーケティングに活用する先の明確な目標設定が重要となります。コンテンツの役割やTikTok特有のミーム文化に合わせた企画を、制作納品型のビジネスで終わらせるのではなく、貴社マーケ戦略に合致した形で進めるためにも、事前の目標(KGI)と達成に向けたKPI設計が非常に重要になります。この記事をきっかけとして、TikTokなどショート動画活用のマーケティングへ関心をお持ちいただければ幸いです。
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