「オペレーショナルなCX」と「エモーショナルなCX」

感情を揺さぶる「エモーショナルなCX」

一方で、Z世代のみならず、現代の生活者は、スマートフォンを通じて非常に多くのデジタル接点を持っています。特に最近ではショート動画は、その短尺ゆえのコンパクトさ(タイパ視聴)と表現力でブランドの世界観の表現しやすさから、ショート動画プラットフォーム(Instagram、TikTok、YouTubeショートなど)によって、エモーショナルなCXを受け取る時間が急増しています。
NikeはInstagramはフォロワーは3億人を超える人気アカウントです。近年のInstagramの動画シフトに合わせて、Nikeも動画投稿を増やし、それを見た生活者の感情を揺さぶるエモーショナルなCXを創造しています。ブログ執筆現在、パリパラリンピック2024大会が開催されていますが、その開催直前にNikeはInstagramで“Let’s get something straight. Winning is winning”と題したパラオリンピアンを主役にした動画を投稿しています。現時点で再生回数は560万回再生を超えています。この動画を見て心揺さぶられ、パリでのオリンピアンの活躍に胸踊らされるのです。
言うまでもなく、こうした「エモーショナルなCX」「エモーショナルなブランド体験」を提供できるようになった理由としては、近年のSNS、プラットフォーマーのアルゴリズムの変化と表現フォーマットの進化です。

・SNSがフォロー型から、レコメンド型へ変化
・表現フォーマットが「ショート動画」へシフト

これらについて、簡単にまとめてみます。

・SNSがフォロー型から、レコメンド型へ変化
SNSはFacebook、旧Twitter など、友人や知人、そして著名な人物や企業アカウントなどをフォローすることからスタートしてきました。これらのSNSを開けば、そこには親しい友人などの投稿を閲覧することができたのです。表示される投稿は、それぞれのSNSのアルゴリズムによって決定されます。このSNSの基本パターンが今、大きく変化しています。特にTikTokの登場によって、投稿表示のパターンが大きく変わりました。日頃からTikTokに触れている方ならお分かりでしょうが、TikTokは標準設定で、「レコメンド」のタイムラインを視聴します。そこには視聴者本人の過去の閲覧履歴やリアルタイムの興味関心事項をもとに「最も興味あるだろうと思われるコンテンツ」が配信されます。よくTikTokは見始めたら止まらないと言われるのは、個人に最適なコンテンツを選択する技術が優れているからです。つまり現在のSNSは「フォロー」した人のコンテンツよりも、その人個人にパーソナライズした興味関心コンテンツを見せる「レコメンド型」が増えているのです。
この「レコメンド型」のSNS、メディアが増加することで、ブランドが発信するコンテンツも、それが視聴者に支持されれば(エンゲージメントされれば)上限なく配信されるのです。皆に支持される魅力的なコンテンツこそ、そのブランドの「エモーショナルなCX」であると考えます。

・表現フォーマットが「ショート動画」へシフト
動画がインターネットの表現フォーマットの主役となる、これはYouTubeによって証明されました。高速インターネットの普及、携帯通信回線の高速化などがその背景にありました。またスマホの普及によって、映像フォーマットが16:9の横型から、スマホを縦にしたまま閲覧できる縦型へ、かつユーザーが手短に情報を受け取れる、比較的短い時間のショート動画へ大きくシフトし始めています。TikTokがそのフォーマットの牽引役ですが、TikTokに追従する形で、YouTube,InstagramもそれぞれYouTube Short、Instagram Reels といった「ショート動画」へ大きく舵を切っています。TikTokだけであれば、一つのメディアの表現フォーマットでしたが、彼らが追従することで、「ショート動画」はスマホの中の表現フォーマットとして、全く無視できない存在となりました。

SNSが「レコメンド型」へ、そして表現フォーマットが「ショート動画」へシフトすることによって、ブランドはより「エモーショナルなCX」を創造することが可能になってきました。20年も前のことなら、画像と自社ホームページでしか表現できなかったCXが飛躍的に進化し、より感情的な(エモーショナルな)CXを実現できるのです。
日本企業の多くはメールやサイト制作、またCRMなど「オペレーショナルなCX」は得意とするものの、欧米企業と比較して「エモーショナルなCX」は大きく遅れているのが現状です。「エモーショナルなCX」を積極的に進め、お客様と感情的な繋がりを深め、ブランドへのロイヤリティを構築することによって、持続的成長を実現しましょう。

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